2019年中国武漢市で発生した肺炎はSARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)と同じ病原体であるコロナウイルスの仲間で、新型コロナウイルス(SARS-Cov-2)であることが判明しました。その後またたく間に世界中に広がったのは周知の通りです。
新型コロナウイルス感染者の80%は軽症のまま経過し、発症から1週間程度で治癒します。しかしながら20%は1週間から10日後に肺炎が急速に悪化し、5%が人工呼吸器など高度医療を要するようになります。では感染した場合、治療はどうすれば良いのでしょうか。残念ながら現時点で特効薬はありません。治療のゴールは1週間から10日後に急速に悪化する肺炎を重症化させない、死に至らせない様にすることです。多くの軽症の患者さんは解熱剤等の対症療法で改善していきます。状態が良くない、悪化傾向にある場合には薬剤使用を検討します。実際に使用している薬剤としてはシクレソニド(オルベスコ吸入薬)、ファビピラビル(アビガン)、レムデシビル(ベクルリー)、ナファモスタット(フサン)、デキサメタゾン(ステロイド薬)などが挙げられます。臨床試験の結果が徐々に論文として発表されています。患者さんの状態(酸素投与、人工呼吸器装着の有無など)、感染発症からの時期などによって効果に差があるようですので、どの薬剤を使用するかは、状況に応じて決定していきます。
ではこのウイルスに感染しないようにするにはどうしたら良いのでしょうか。新型コロナウイルスに関わらず、危険性のあるものから身を守る手段として「防護の3原則(距離・・時間)」が重要です。つまり1m以内(距離)で互いにマスクせず(遮蔽)、15分以上(時間)接触があれば濃厚接触となり、感染するもしくは感染させてしまう危険性があります。逆に言えば十分な距離を保ち短時間でマスクをしている環境であれば感染の危険性はほとんどありません。もちろん接触感染でもあるので手指消毒も重要ですが、過度に恐れず防護の3原則を心がけながら日常生活を送って頂ければ良いかと思います。
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